Tokyo Choral Association

こらむあんだんてNo.209


そのまま いま ここにある

 

作曲家・指揮者 相澤直人

僕の祖父はハーモニカ奏者の一面を持っていたようで、僕が生まれて初めて興味を持ったおもちゃは、家に置いてあったクロマチックハーモニカだったそうです。その後、音楽の「お」の字も知らない両親が「楽譜くらいは読めたらた良い」程度の思いで音楽教室に通わせてくれました。そして偶然にも、一番古い幼馴染は所謂地元の大地主の家の子で、その豪邸には象牙の鍵盤のグランドピアノが置いてありました。(但し、その一家は誰もピアノを弾けない!)毎週日曜日になると、そのお父様から「直人くん、弾きにおいでよ」と電話がかかり、贅沢なレッスン室に通ってグランドピアノで遊ばせていただきました。

 

小学生低学年の時、従兄の家族と買い物に行き、偶然その日が発売日だった「ドラゴンクエスト3」を買ってもらいました。ドラクエデビューです。僕は、ストーリー、RPGとしての魅力などよりも音楽にハマってしまい、特に絶望感を持って訪れた大地で切なく流れる「アレフガルドのテーマ」の虜になりました。(その時に初めて短調の曲の魅力を知った気がします。)その後、初めて生のオーケストラを聴きに行ったのは「交響組曲ドラゴンクエスト5」の演奏会でした。バロックの様式感、舞曲、変拍子、近代的な和声、教会旋法、複調や無調の曲の存在を知ったのも、全てドラクエ。すぎやまこういちさんは今でも最も尊敬する音楽家の一人です。

 

さてその後、芸大の作曲科に入るため、和声、対位法と、楽器法、楽式、そして受験のための「ソナタ形式での作曲」などに打ち込みます。それはつまりロマン派までの理論で、当然入学後に大きな苦労を味わうこととなります。だって入学した途端に、現代音楽しか認められないような空気の中に置かれたのですから。

 

ほとんど挫折を味わっていたとも言えるその状況下で、ふと「そういえば調性のある、キレイな曲ってあまり作ったことがないな。」と思い、20歳の誕生日になんとなく作曲したピアノ曲は、偶然出会ったさくらももこさんの詩と後に結ばれ、多くの人に愛唱されることとなりました。

 

幼馴染も、ドラクエも、大学時代の挫折から生まれたあのメロディーも。

今でも自分の音楽人生を支える大切なものとして「ぜんぶ ここに」あります。音楽に夢中になったキッカケは人それぞれでしょうが、その偶然を大切にし、その思いをいつまでも心のなかで育み続けたいものです。

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