Tokyo Choral Association

著作権便利帖 8


著作権便利帖vol.8

テーマ:《フェア・ユース》とは何か? (続)「楽譜コピー」問題から著作権法を考える

 

つい先日も、ある合唱団の団員さんから、「《つぶてソング》(詩:和合亮一/曲:新実徳英)の第1集と第2集のなかから抜粋して演奏会で歌いたいのだけれど、楽譜を2冊持つのは面倒なので、歌う曲だけコピーして使いたいんだけど。」という話をききました。きちんと全員が第1集、第2集とも楽譜を購入したにもかかわらず、著作権法上は、この場合、法律違反になってしまいます。そして、こうした「なぜ?」という疑問をたどっていくと、日本の著作権法が「コピーが許されるケースを《個別に列挙する方式》で定めている」という問題に行き着く、というのが前回ご報告したお話です。

個別・列挙の法律は重要だけれど…

話が脱線しますが、この「個別・列挙」は、実は私たちにとって非常に大切なキーワードです。それは「罪刑法定主義」という法の原則において、です。「どういう行為が犯罪となるか、それに対してどういう刑罰が科せられるかは、必ず法律で具体的に決めておかなければならない」というルールは、国が恣意的に国民を処罰することを防ぐ人権保障を意味し、近代の民主主義国家における刑法の大原則とされています。日本国憲法31条でもそのことが定められています。「等」という1文字が入ることで、ある行為が犯罪になるかならないかが恣意的に判断されるのではないか?という、現在議論されているいわゆる「共謀罪」にまつわる議論にも、まさにこの問題が含まれています。

一方、目を著作権法に移し、第1条にある「文化の発展に寄与する」という、この法律の目的を果たすために、例えばコピーをできる条件を個別・具体的に列挙し、それ以外は「違法」とすることは、果たして妥当でしょうか?この疑問に対するひとつのヒントとして、アメリカの著作権法にある「フェアユース」という考え方があります。ある行為が著作権の侵害にあたるかどうかの判断を、いくつかの視点から総合的かつ柔軟に判断しよう、というものです。

公正な利用って?

では、「フェアユースであるかどうか?」は、どういう基準で判断されるのでしょうか?アメリカをはじめこの考え方を導入している国では、概ね次のような4つの判断基準によっています。なお、これらの基準は「全て充していなければ」とか、「ひとつ充していれば」というような性質のものではなく、あくまで「公正であるかどうかの判断の拠り所となる視点」が4つある、ということです。そしてひとつひとつの基準は抽象的です。

①利用の目的と性格

楽譜のコピー行為が営利目的か、非営利か?という視点。非営利であれば、よりフェアであると認められやすい。ただし営利目的であっても、後に挙げる④との兼ね合いで、権利者の利益に大きな害を与えていなければ公正であるという判断も可能です。

②著作物の性質

著作物の内容が、単に事実を伝えるもの(報道記事や学術論文)であるか、芸術性を帯びたものであるかによる視点。あるいはその著作物が絶版である、といった、利用の困難性も、この場合の「著作物の性質」に含まれます。

③著作物全体に占める利用部分の量及び重要性

著作物の全部なのか一部なのか、あるいは著作物の核心的な部分に触れているかいないか、という視点。

④著作物の市場や価値に及ぼす影響

元の著作物の売り上げに悪影響を与えるなど、市場価値を犯す(ひらたくいえば「営業妨害」)行為であるか、あるいは著作物の価値を損なう行為であるかどうか、という視点。

何がフェアであるかを考える

今回の話題である「楽譜のコピー」に当てはめてみると、音楽という芸術性の高いものである(②)、1曲全部コピーしている(③、なお組曲の一部抜粋コピーではあっても、一曲一曲がそれぞれひとつの著作物と考えられ、「ごく一部のみのコピー」とは認め難い)、といった点ではフェアユースの認定には不利な面があるいっぽう、コピーを販売するなどの営利行為ではない(①)、元の楽譜は購入しており、権利者の利益は侵害していない(④)といった面ではフェアである、と考えることが可能でしょう。

上のケースをみて、みなさんは今回の楽譜コピー行為がフェアであると思いますか?あるいはアンフェアでしょうか?実は○×式の正解はありません。この「正解がない問題」をみんなで考えること自体に意味がある。次回には、その意味について考えてみたいと思います。

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