《動画投稿サイト》に演奏をアップしたい

 

紙面の都合で「著作権便利帳」、すっかりご無沙汰して、前回のvol.8から1年以上経ってしまいました!前回は、「フェア・ユース」(公正な利用)という、著作権にまつわる最新の問題についてお話し、「続きは次回に」と結んでいました。実はその「次回」でそろそろ著作権に関する最終回にしようかという予定でいたのですが、その後1年の間に、またいろいろと「便利帳」にふさわしい話題も出てきたりしたので、今回は「フェア・ユース」の件から少し離れて、「動画投稿サイト」について。

動画投稿サイトを活用してみよう

動画投稿サイトというのは、インターネット上で動画ファイルや音声ファイルを投稿したり、視聴できるサイト。「YouTube(ユーチューブ)」や、「ニコニコ動画」などがよく知られていますね。特にYouTubeは、誰でも登録不要かつ無料で動画や音声データを視聴できるため、「見たことがある!」という方が少なくないと思います。

こうした動画投稿サイトは、もともと私たち一般のユーザーが家庭用ビデオで撮った映像、例えば家族やペットの動画を親戚や友人と気軽に共有できる、そんな楽しみをインターネット上で実現するためのサービスとして爆発的に人気を得たもので、アカウントさえ作成すればパソコンやスマホから手軽に動画や音声データをアップロードできるのが最大の特徴です。

特にYoutubeのような世界中にユーザーがいる大規模なサービスでは、もしかしたら私たちが撮った映像が世界中の人々の話題になるかもしれない訳です。つまり、私たちのような合唱を楽しむアマチュア団体も、この動画投稿サイトをうまく活用することで、自分たちの演奏を世界中の人々に聴いてもらえる可能性があるのです。

演奏会の録画・録音をアップロードできる

動画投稿の実際の方法は、YouTubeをはじめ個別の投稿サイトに方法が出ているので、それをご覧いただくとして、ここでは著作権の視点からの手続きの流れを整理してみたいと思います。著作者の権利や手続きの必要性については、すでにvol.1から5にかけて、特にVol.5では録音・録画やアップロードについて触れており、今回はその復習を兼ねて、より具体的に調べてみました。

ここで想定するのは、以下の①~③を全て満たす場合です。

①「自分たちの歌った演奏(※1)を」

②「自分たちで記録用に録画・録音して(※2)」

③「そのデータを自分たちで動画投稿サイトにアップロードする」

この場合、まず③の「アップロード(公衆送信)」にあたって、著作者や著作権者(作曲者、作詩者、著作権管理団体など)の許諾を得なければなりません。それから①に関しては、共演したピアニストなど、合唱団のメンバー以外の音楽家がいればそれらの人の許諾が必要です。また②に関しては、もし録音・録画業者にCDやDVDの製作を依頼した場合には、その業者が「原盤権」という著作隣接権を持つ場合があり、やはり許諾が必要です。

(※1)演奏会の場合には、著作権法に従って「演奏」に関する必要な許諾手続きをしていることが必要です。

(※2)例えばですが、業者から演奏会のDVDを1枚だけ購入し、その画像を動画サイトにアップロードしてみんなで共有してしまったら、その業者さんは売り上げ激減で、とても困ってしまうかもしれません。そういった権利への配慮も含めて著作隣接権が存在しているのです。

 

ちなみに、JASRACが管理している楽曲に関しては、JASRACが許諾契約を結んでいる特定のサイト(YouTubeも含む)であれば、アップロードに際して私たちが特に許諾を得る必要がありません。(※3)

ただし、JASRACは次のような2つの条件を挙げています。

A「動画の内容が特定の企業や商品、サービスを宣伝するものでないこと」

B「アップロードするのが個人であり、企業や団体でないこと」

 

もちろん、JASRAC以外の団体や個人が権利を管理している楽曲の場合には、それらに対してアップロードの許諾を得る手続きが必要です。こうしたケースでは、演奏にあたって許諾の手続きをするはずなので、その時に同時に許諾を得ておくといいでしょう。

さらに、これは書くまでもありませんが、アップロードできるのはあくまで「自分たちの演奏」の場合であり、他の演奏者に無断で録音・録画したものや、ダウンロードしたものを無断で再度アップロードすることは、当然、法律違反となりますのでご注意を。逆にいえば、自分たちの演奏をアップロードしたのですから、この音源に関しては私たち自身が権利(演奏者としての著作隣接権)を持つことになる訳です!

なお、JASRACが利用許諾契約を締結している動画投稿サイトの一覧はJASRACサイトをご覧ください。このページをみると、動画投稿だけでなく、「JASRAC管理楽曲の歌詞掲載が可能なブログサービス」の一覧もあったりして、興味深いです。ネットは使いようですね。