著作権便利帖vol.4
テーマ:実践編「演奏会を開こう!」
前号の結びは、こうでした。
『やはりこのコーナーは「便利帳」ですから、次回は具体的に「演奏会を開くにあたってどうしたらいいか?」というお話に移りましょう。』
という訳で、今回は「合唱団が演奏会を開く」というときに、著作権に関して何が必要か?というお題です。
Q9「この演奏会は著作権法上、演奏の許諾が必要なケースでしょうか?」
以前Vol.2にあった問いと答えの復習をしてみましょう。
Q5 どんなふうに歌うとき、著作権法の制約を受けるのでしょうか?
☞こたえ:「公衆の前で・有償で歌う」とき
いちおう、ここではホールなどを借りて演奏会を開く。指揮者やピアニストの先生に謝礼を払うし、チケットは1枚500円。といった、よくあるパターンを想定してみます。この場合、上のQ5に照らして、この演奏は著作権法に則り、権利者の許諾を得る必要があります。
Q10「どの曲が、著作権法上、演奏の許諾が必要なのでしょう?」
さて、ある合唱団が、こんな演奏会を行いました。
第1ステージ:モテット「イエス、わが喜び」ヨハン・セバスチャン・バッハ(曲)
第2ステージ:「骨のうたう」竹内浩三(詩)/新実徳英(曲)
第3ステージ:「3つのシャンソン」モーリス・ラヴェル(詩・曲)
第4ステージ:「唱歌の四季」三善晃(編曲)
ひとりひとりの作曲家、詩人がそれぞれに著作権を持っています。従って、例えば演奏会が全部で4つのステージ(4曲の合唱曲)で構成されているのであれば、その4曲それぞれについて権利者の許諾が必要です。
ただし、Vol.1に書いたように、日本においては著作権の保護期間は、作品が誕生してから著作者の死後50年後までが原則。上のプログラム例でみると。。。
第1ステージ:バッハの没年は1750年ですから、当然すでに著作権は消滅。(著作権が消滅した作品を「パブリックドメイン(P.D.)」と呼びます。)歌詞はもちろんそのはるか前から教会で詠われたもの。従って第1ステージは著作権処理の必要はありませんね。
第2ステージ:詩人竹内浩三は、1945年4月フィリピンにて戦死。従って没後50年の1995年にパブリックドメインに。作曲家新実徳英はご存命で、当然著作権を持っています。
第3ステージ:へえー!ラヴェルが自分で詩を書いてたんですね!! 彼は1937年に没しており、本来は1987年までが著作権の保護期間ですが、サンフランシスコ平和条約に基づき、日本は旧連合国の国民に対して、戦時期間ぶんの著作権保護の延長が義務づけられているため、フランス共和国の国民であったラヴェルには3,794日(約10年※)の延長、従って1997年まで著作権がありました。今ではパブリックドメインの訳ですが、戦時加算については、戦前に書かれたか戦中に書かれたかによっても延長期間が異なるなど細かい規定もあります。近代の作品はこのように、戦時加算も含め、著作権の有無が微妙なケースも出てきます。ご注意。
(※文部科学省HP「著作権の保護期間に関する戦時加算について」、日本音楽著作権協会HP「著作権の保護期間に関する戦時加算とは?」参照)
第4ステージ:文部省唱歌は、国が編さんした曲集ということで、一般には作詩、作曲者の著作権はないものとされています。ただし、三善晃の手による編曲には「編曲著作権」があり、この曲は許諾が必要です。
さて、このように著作権があるかないか、けっこう簡単にわかるケースと、微妙なケースがあることがわかりますね。では、実際、演奏会を開く場合、どうしたらいいか。一つの方法を。
Q11 かんたんに著作権の状況がわかる方法って?
ステップ1
■日本著作権協会(JASRAC)のwebサイトのなかに、「作品データベース検索サービス」ここに作品名や作曲者名などを入力すると、著作権の有無を知ることができます。「PD」マークがあれば著作権が消滅している、ということです。まずはここでチェック。
⇒ここで「著作権あり」となっている作品であれば、JASRACのトップページに「音楽をつかう方」というボタンをクリックすると、「手続きの案内」「使用料規定」「使用料シミュレーション」から「申し込み書類のダウンロード」まで一連の知りたいことがだいたいわかります。
(※)実態としてJASRACが著作権を管理している作者は多いため、だいたい国内作品であればこのステップ1で手続きが可能なケースは多いようです。しかし。。。
ステップ2
■このサイトでは、JASRACが管理している作者についてはわかりますが、それ以外の作者についてはわかりません。海外の合唱作品ではそういうケースも少なくないと思います。従って、ステップ1で著作権の所在がわからない場合には。。。
⇒楽譜をみてみましょう。出版社名とその連絡先が書いてあるはずです。そこへ問い合わせてみましょう。その出版社が作品の著作権を持っていればそれで手続き方法や使用料がわかるはず。もしも作曲家個人が著作権を管理している場合などでは、出版社がその旨教えてくれるはずです。
あ。そういえばコンサートを開くのであれば、プログラムに歌詞を入れたり、あるいは録音したり録画したりしますよね?紙幅が尽きました。続きはまた次回でどうもすみません。