歌う。笑う。そして耳をすます。それがココロと体の健康の秘訣!

働き方改革、などと上から目線で言われる以前に、「生き方改革」絶賛実践中の、歌って笑うひとびと。

オトナの部活

female vocal ensemble Allure(リーダー:黒尾有美子さん)

 

ジャジーなバーバーショップの曲集を振り付け付きで。今日は、間近に迫った演奏会へ向けて猛特訓中の稽古場にお邪魔しました。誰かが間違えるたびにみんな笑い転げ、腹筋がケイレンしています。一言でいえば、けたたましい。「女子高の部活」とメンバーも言う。そして「老後はみんなで一緒に住もう!」とも。

「音楽大学卒」+「声楽家ではない」が入団規定、という世にも珍しい「アマチュア合唱団」です。プロの器楽奏者としてのそれぞれのお仕事、そして子育てや親御さんの介護のかたわら、空き時間をやりくりして練習に集まります。いちばんのご苦労はやはり日程調整。仕事のスケジュールをかいくぐり、できるだけ多くのメンバーが集まれる日をみつけて不定期練習の日々だそう。それでも、お仕事の都合で、この日も、練習の途中でひとり、またひとりと早退していきました。

リーダーのピアニスト・黒尾友美子さんは、数多くの合唱団のピアニストを務めるかたわら、ご自分も趣味として合唱を楽しんできたそう。その喜びを分かち合おう、と、ピアニストの横のつながりで声をかける。一方、黒尾さんの妹・文恵さんが東京フィルハーモニー交響楽団のクラリネット奏者で、オケ仲間にもこの輪がひろがります。

ちょっとユニークな経歴を持つのが、ダンスの振り付けを担当する大出満美さん。音大受験を諦め、上智大学の独文科に進学。合唱団のピアニストを務めるとともに、専門知識を活かしてドイツ語の歌詞の翻訳にも関わったそう。そして会社員生活を経て27歳で改めて音大に社会人入学。そこで演劇科の仲間から影響を受け、活動の幅が広がる。そのほか、音楽家には珍しく(?)事務処理能力に長けた半田規子さんが大所帯の面倒をみます。待望の「指揮科出身者」もついに入団したとか!

さてみなさん、さすがに仕事柄、楽譜を読むのがとにかく早く正確。1を言えば10も100も共有できる音楽的下地がある。あるにはあるのですが、なにしろ「歌は歌ったことがない」というひとが大部分なので、立ち上げの頃には声楽家・指揮者の田村茂さんの指導を仰いだそう。「僕はまじめにやってるつもりなんですけどねえ。。。」と田村さんに呆れられるほど、すごい音程と声だった、と黒尾さんは当時を笑って振り返ります。みんな揃って絶妙に「できない」。そのダメさ加減がまたいい。そしてみんな忙しく「演奏会当日にはじめて全員揃う」のに、「だからこそ本番で新しい発見があるのが楽しい。」と、とにかくすべて前向きです。

演奏会では暗譜をめざし、仕事場でも自習を欠かさないそう。ふつう、オーケストラの本番前の楽屋といえば、みんなその日の演目を必死でさらっているのに、その一角で合唱の練習に没頭していて、同僚に「何やってるの?」と驚かれたそうです。暗譜をすれば、目線を交わし合い、歌を楽しむ心地よさを、よりお客さまに届けられるのではないか、という、プロフェッショナル意識と、ピュアな「音楽好き」さんの気持ちがとても「良い加減」で混ざり合った演奏、本番も聴かせていただきました。心に届く歌でした!