女声合唱団はなえみ
このピアニストといっしょに歌いたいっ!
素晴らしい指揮者のもとで歌いたい!合唱団の生い立ちをみると、そういう動機で集まるケースは多いように思います。合唱の講習会などで素晴らしい音楽体験ができた、というきっかけで参加者の有志が手を挙げ、講師の先生を指揮者に迎えて合唱団を立ち上げた、といった話をときどき耳にします。もちろん、学校時代の部活動の仲間が恩師を慕って集まり、卒業後も歌う、というコーラスも形は違えどその一種でしょう。
しかし今回訪問した『はなえみ』の場合はちょっとユニークで、「このピアニストと一緒に歌いたい!」というのが誕生のきっかけだそうです。活動の拠点は横浜市ながら、遠く所沢、練馬、町田からも集まるメンバーの共通点は、さまざまな合唱団、さまざまな機会にピアニスト渕上千里さんとの共演体験。
渕上さんのピアノで歌うことをめざして創立。今日は2月27日、みなとみらいホールで開催の横浜コーラルフェストへ向けて追い込みの練習です。指揮は依田浩さん。
依田さんは、渕上さんと国立音楽大学時代の同級生。渕上さんのたっての希望で『はなえみ』の指揮者に迎えられて3年半になりました。創立以来、メンバーと渕上さんのめざす合唱は、「美しい日本語」ですが、渕上さんと気心の知れた依田さんもその思いは同じです。なお、ヴォイストレーナーには、コンビーニ・ディ・コリスタ合唱団のメンバーでもある斉藤三和子さんを迎えています。
依田さんのウィットに富んだ語り口で笑顔が絶えない練習。渕上さんはといえば、ひたすら黙々とピアノを弾いています。
さまざまな指揮者から音楽の多様性を学ぶ
創立当初は指揮者なしで、ピアノを囲み歌ったそうですが、その後は、2、3年ごとに違う指揮者にお願いし、節目で演奏会を、というのが活動のポリシー。これまでに武田雅博さん、清水昭さんを指揮者に迎えています。思い出の初ステージは武田さんの指揮で、東京都合唱祭での《地球に寄り添って》(詩:片岡輝 曲:鈴木憲男)
指揮者が替わることで、とまどいや、ロスタイムもある。でも『はなえみ』のみなさんも渕上さんも、逆にそれをポジティブに捉えるそうです。さまざまな指揮者との交流を通じて、音楽の多様性に気付く。そしてそのなかから、逆に普遍性も見いだす。それはとてもぜいたくな音楽体験ではないでしょうか。
奥様は名門・杉並学院高等学校合唱部を率いる渕上貴美子さん、という音楽一家。高校時代から合唱部で活躍されたという千里さんは、ピアニストとしてコンサート活動を重ねるかたわら、指揮者としても活躍するマルチ・ミュージシャン。現在5つの合唱団で、共演・指導されているそうです。
指揮者とピアニスト、ご自分のなかでどう切り替えをしているのか、ご本人に伺ってみれば、どうも「使う脳ミソの場所が違う」のではないか?とのこと。ピアノを弾いた後で指揮をするのは比較的簡単に切り替えがつくのに対して、指揮をしたすぐ後にピアノを弾くと、切り替えが難しいことに気づくそうです。恐らくはなにか科学的根拠もあるのかもしれませんね、と渕上さん。
練習場所は、横浜・桜木町の丘の上。大きな窓からみえる緑がきれいでした。
(2015年2月 200号)