明治大学グリークラブOB会合唱団 駿河台倶楽部

 「常に新しいという伝統」

第14回定演(7月22日)直前の練習へ。指揮は渡辺利雅さん・筑紫貴博さん。客演ピアニストは村田智佳子さん。
隔年開催の定演と東京六大学OB演奏会を交互に、都連の事業では合唱祭と春こんへの参加を活動の柱に据え、創立から23年。
団員の年齢層も幅広く、ベテランから最年少は20代まで。

今回定演では、新作『僕の愛 あなたの夢』(作詞:栗原寛 作曲:大藤史 編曲:森田花央里)を初演。
前回定演を聴いたシンガーソングライター大藤史さんからの「駿河台倶楽部さんに“愛の歌”を歌ってほしい!」という言葉がきっかけ。

史さん×栗原寛さんのタッグ「ふみくりプロジェクト」3作目にして初の男声作品。史さんが弾き語りした4曲の旋律に、栗原さん(歌人にして歌い手、指揮者…etc.と、合唱と文学、双方の“うた”の世界で活躍中)が後から歌詞をつけ、さらに森田さんが合唱に編曲。史さんが即興的に歌った箇所を、合唱ではこういうスキャットで歌おう、と渡辺さんがサジェストして作りあげた部分もあるそう。


〈作曲者の大藤史さんも練習にお越しでした〉

全体練習の合い間、団員のみなさんはゆったり休憩するのかなと思いきや、パートごとに輪になって集まり、リーダーを中心に音やフレージングについて細かく確認。

愛の表現に照れ気味?な団員たちに、「“手振り”をつけて!」「ここは“全力少年”で!」とポテンシャルを引き出す渡辺さん。
せつなく揺れる恋心の鼓動が躍る、キャッチ―なメロディとジャジーなアレンジ。
ひたむきに憧れ、願うほど遠ざかる夢…やがてすぐそばにある幸せへとたどりつく心の軌跡。
男声の魅力あふれる愛唱曲がまた一つ誕生しました。

数々の新作を世に問うてきた明グリ。名曲『三崎のうた』(作曲:多田武彦 作詩:北原白秋)もそうした委嘱作の一つ。48年前の初演作品を、在学当時以来久々に歌うというメンバーも。初演当時は団員数がまだそれほど多くなかったとのこと。長く人生経験を積んだのちに、かつて歌った作品のなかで若き日の自分に再会するのは、また格別な感慨がありそうです。

「聖母マリア賛歌集」は筑紫さんの指揮。「明グリ」らしい宗教曲ステージは、実は近年に始まった新たな伝統。若い世代が開拓した新たなレパートリーがOBたちにも還元され浸透していく。

常に新しいという伝統」=「明グリ」マインドは、世代を超えて健在のようです。


〈指揮:渡辺利雅さん・筑紫貴博さん〉

(2017年8月 210号)