アイデアはポップコーンのように

プロビーズ(指揮・ピアノ:秦万里子さん)

 

テレビでもおなじみのミュージシャン秦万里子さんといっしょに歌おう、という地域おこしのイベントが発端。その後、秦さんが音楽事務所から独立してフリーになったことで、これまでの「アーティストと一般参加者」という関係からより距離が縮まって、お互いやりたいことができるようになったそう。

 

自らの体験をもとに「主婦目線で日常を歌う」という秦ワールドに魅せられた女性たちが声を掛け合い、コーラス教室が首都圏や関西で開かれています。「プロビーズ」はそのひとつ、目黒区大岡山で週に一度活動しています。

秦さんの自作曲を、楽譜を使わず耳で聴いて覚えて歌う、というのが秦さんのコーラス教室の特色で、楽譜を読めない人でも全くOKだそう。秦さんはこう言っています。「楽譜って確かにツールとして便利だし重要。でも、全員がそうじゃなくてもいいじゃないか?」「音楽なのに楽譜にとらわれて『目の文化』になってしまってはいないないか?『耳』を取り戻したい!」

今日は新曲。練習場所である大岡山のまちの風景を歌いました。手書きで紙切れに書き留めた歌詞のコピーを配る。メロディは秦さんの頭の中です。「きゅーんとする和音」を探してピアノの鍵盤をまさぐりながら、「あっ次のセクションのメロディ忘れた!」「誰も知らないよね。」で、全員爆笑。

誰にもしっくりとくる言葉を選ぶ。「ちょっとここ、言葉変えてもいい?」歌詞が変わった。「あっ、そうするとメロディもハーモニーも変えたくなってきたなあ。」アイデアがポップコーンのように弾けては消え、メロディ、和声、リズム、ことばが自由自在に変わっていきます。1回練習を休むと、歌が変わり果てていて呆然とする。全員で「シンガーソングライター体験」をゲーム感覚で楽しんでいるかのようです。

「前しか向いてないんで、昔のことは忘れたなあ!」そんな、今を突っ走る秦さんは早口で、ちょっと油断するとメンバーたちはあっという間に置いて行かれます。ちんぷんかんぷんの秦語録をICレコーダーで録音して後で復習するそうですが、とにかく毎回毎回、頭の体操。そして歌うか笑うか、どちらしかない、休憩なし90分一本勝負を続けるうちに、心も体も健康になっていくそう。「耳(と心)」がみんなの絆です。