物語、身体、そして歌

コーロ・カロス

カロス(Kallos)とはギリシャ語で「美」のこと。栗山文昭さんを指揮者・音楽監督として1981年に誕生。練習指揮は横山琢哉さん。

レパートリーはルネッサンス音楽から同時代音楽まで幅広く、じっさい近年の演奏会の演目をみても、2011年は林光さんの新作合唱オペラ「アシタノキョウカ」初演、2014年はヘンデルの≪メサイア≫、そして今年の公演は再び新作合唱オペラ初演と、激しく時空を駆け巡るバラエティです。今日は、今年10月の公演『そして旅に出た –モノガタリとコエカラダと』(作・演出:加藤直 曲/寺嶋陸也)へ向けた稽古場にお邪魔しました。多彩な活動のなかでも、柱となるのがこの「合唱オペラ」という形態の舞台作品。その公演に備え、ウォーミングアップにも演劇的な要素がたっぷりです。

この「合唱オペラ」という活動路線のきっかけとなったのは、劇作家・演出家 加藤直さんとの出会い。東京室内歌劇場の『火の鳥 ヤマト編』(手塚治虫原作/青島広志作曲)に出演して以来のお付き合いだそうです。「合唱がただ突っ立って歌うのって、おかしいじゃないか。」という、舞台・客席をめいっぱい使う「劇場空間」づくりに刺激を受け、合唱と演劇との間の垣根を突破することで新しい表現をめざすようになったとのこと。またコーロ・カロスは、オペラシアター「こんにゃく座」の顔ともいえる座付き作曲家・林光さんの作品をしばしば取り上げていますが、林さんとの出会いも、加藤さんを通じてのことだったそうです。

取材した6月時点でまだ寺嶋さんの作曲は前半までしか完成していません。今日はその前半をひととおり通してから、車座になって加藤さんの台本を読み合わせしました。演奏経験が豊かなメンバーも、そして加藤直の語法に精通したメンバーも、ゼロから台本を解読し、真摯に作品に向かい、腑に落とし込んでいく姿がとても印象に残ります。「深読みしすぎだよね、僕ら。」指揮者の横山さんも苦笑しています。2011年、震災の直後にもこういう車座の話し合いをしたそう。「うたう原点」を再確認したひとときだったそうです。

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(ウォーミングアップを兼ねて稽古場いっぱいに歩き回る。今回の公演に向けて、日本を代表するダンサー/振付家の山田うんさんをコーチに招き、身体表現ワークショップを体験するとのこと。羨ましいです。)

コーロ・カロスの佇まいは、歌い演じているときも、そしてまたこうして議論をしているときも、その「群像」の姿がとても印象的なのですが、今回、加藤さんの台本のなかに「コロス衆」という役があります。「合唱オペラ」は。コロス(合唱隊)が主人公。そのコロスが「コロス衆」を演じる、という入れ子構造のような、劇中劇のような、加藤さんの謎かけにカロスの面々はどう答えるのでしょうか?議論は(たぶん)まだ続きそうです。

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(練習指揮の横山琢哉さん)

 

【公演情報】

コーロ・カロス公演2016 合唱オペラ「そして旅にでた -モノガタリとコエカラダと」(委嘱初演)

2016.10.18(火)午後7時開演 新国立劇場 中劇場(京王新線初台駅真上)

作・演出/加藤 直 作曲・ピアノ/寺嶋陸也 指揮/栗山文昭

クラリネット/橋爪恵一 パーカッション/加藤恭子 振付/山田うん 照明/齋藤茂男

舞台監督・美術/八木清市

(2016年8月 206号)