合唱人口が増えるには
合唱指揮者 中村拓紀(なかむらひろき)
10代の頃のぼくはロックバンドが好きでした。ずばり「カッコイイ!」と思ったからです。そんな憧れからギターを始め、好きなバンドのスコアをよく読みました。少しずつ自分の世界が広がる中でQUEEN(クイーン)や日本のTHE ALFEE(アルフィー)に出会い、3声でハモるって「超カッコイイ!」と思いました。同じころ、ステキな年上の従姉が「最近、鈴木雅之が好き。」と言ったものですから、自分も聴いてみようとレンタルCDで集めてみたところ、彼がリーダーを務めるコーラスバンド:ラッツ&スター(シャネルズ)にどっぷりハマることになったのでした。
幼い頃にどんな悪い体験があったかはもうあまり記憶にないのですが「音楽は男がするものじゃない、歌を人前で歌うのは恥ずかしいことだ、合唱なんてとんでもない!」と思っていたぼくがハモリに憧れて合唱部の門を叩くきっかけになった話でした。
さて「あまり記憶にない」と申しましたが、いくつかはあるのです。ヤマハ3歳児ランドに通っていたぼくは親曰く「歌が好きで上手だった」そうです。でもぼくの記憶に残っているのはそれではなく、小学1年次の同級生に「お前、音楽なんかやってんのかよ」と言われたことでした。音楽の時間は「大きい声で歌ったら目立ってしまう」と控えめに、歌なんて興味ないよ、と距離を置こうとしていた数年間でした。歌は目立ってしまいますが、リコーダーは控えめにする必要がなかったので普通にやっていたのではないでしょうか。器楽のほうが気は楽だったのがバレていたのか、音楽の先生の誘いで金管バンドに入ってトロンボーンを担当しました。吹くのは楽しかったです。しかし!その金管バンドで過ごした3年間のほとんどで男子はぼく一人でした。ユニフォーム着替えるのも特別扱いだったり、4年生の小さい男子が6年生の大きいお姉さん達にかわいがってもらったりしたのは、当時のぼくにとっては決していい思い出ではありませんでした。
今や自信を持って音楽を、合唱を愛していると世界に向けて叫べるわけですが、このような経験から自分は「カッコイイ!」と憧れてもらえる音楽家でありたい、そして音楽が特定の誰かの物にならぬようみんなが愛せる環境を整える音楽愛好者でありたいです。だから東京都合唱連盟が合唱を広めようとしている活動に賛同しています。子どもが憧れる合唱界、例えばプロ野球のようにちょっとミスをしたら「バカヤロー下手くそー帰れー」とド素人から野次られるレベルまで到達すると、合唱も一般に普及している証になりましょう。