アンサンブル・シマエナガ

 

葉桜が雨に煙る日曜の朝。 “シマエナガ”の皆さんを訪ね都内公共施設へ。練習室の扉を開くと、雨空を忘れさせる爽やかな歌声が響いていた。

団の誕生は2020年。創団の発起人・川口直希さんが音楽監督・指揮を務める。新型コロナ流行による巣ごもり生活のなか、当時大学生だった川口さんが首都圏在住の「長野県リーダーズコール」(※)出身者とリモート合唱を企画したのが始まり。岡谷市出身の川口さんは、県内全域の高校合唱部の代表メンバーから編成されるリーダーズコールで2018年に団長を務め、同年長野で開催された全国高校総文祭での貴重な経験を胸に刻んだ。ピアノ専攻で大学進学後も、地域や出身校の枠を超えた仲間との結びつきを温めてきた。緊急事態宣言の出口が見えないうちから「先に第一回演奏会のホールを予約しちゃったんです」と笑顔の川口さん。一緒に歌う幸せを再び分かちあいたいと溢れた熱い想いが求心力となった。

年齢や出身地の近い仲間は、新たなメンバーを加えて多様化し、今では20名余りのうち大学生と社会人がほぼ半々。都内での練習は日曜午前に月3回、うち1回は午後までの時間をあてる。

合唱祭、コンクールに参加のほか、今春には東京での第4回定演と初の長野公演を開催。好評を得た「ふたつの故郷で」の公演は、来年も東京と松本での開催を企画中。

主なレパートリーは近年の邦人作品。歌詞の情感を伝えるためのディクションや息の流れを意識し、ヴォカリーズでは声だけでどう伝えるかイメージを膨らませる。他パートのフレーズも一緒に歌ってみて、アンサンブルを丁寧に磨く。練習初参加のメンバーへの心くばりも優しい。

この日の練習曲は「世界の約束」。スタジオジブリの映画『ハウルの動く城』の主題歌で、木村弓さんの楽曲に谷川俊太郎さんが後から歌詞をつけた(合唱編曲は若林千春さん)。戦争を背景とした物語のラスト、安らぎの風景の中で大切な人のいのちに寄せる永遠の想いが歌われる。世界で戦禍が絶えない今、終戦80周年となる今年8月の合唱祭でこの曲を歌うことに、深い思いをこめる。

印象的な団名は、仲間とのグループLINEで使っていたスタンプから。日本語の団名の方が覚えやすいかな、と相談して決めた。羽毛を丸めた愛くるしい姿で枝に連なり、生き生きと飛び交う小鳥のイメージは、若い合唱団によく似合う。

巣ごもりの中から生まれ広い空に羽ばたいた合唱団は、さらなる高みを目指し仲間を募集中。

見学・体験参加のお問い合わせは ensemble.shimaenaga@gmail.com まで。

※「長野県リーダーズコール」は2016年創設。県内全域の高校合唱部の代表メンバーから編成され、講習会や地区の合唱イベント、高校合唱フェスティバルでの合同演奏等を通して連帯を育んでいる。