著作権便利帖vol.1
Q1「著作権」って何ですか?
「著作権」は、下の図のようないろいろな権利を総称する言葉ですが、この連載では、コーラスを楽しむ人々にとって関わりの深い、「著作者(作曲者、詩人、編曲者など)の権利」、そして「実演家(指揮者、ピアニストそして歌っている読者のみなさん)の権利」を中心に考えていきましょう。
「著作権」というのは、ひとことでいえば「私の作品を勝手に利用しないでね!」と言える権利。私たちが音楽作品を利用する場合には、つくった人に「あなたの作品を利用させてください」と許可を得て、(必要に応じて)使用料を支払う、というのが「著作権」に関する基本的なルールです。
【音楽における著作権の種類】
Q2 音楽作品の「利用」とは?
音楽の分野に関していえば、著作物(楽曲、詩など)の「利用」には以下に挙げるようなものがあります。
【著作物の利用】
■演奏、CD再生など
■複製(録音、録画、楽譜のコピーなど)(注)「コピー」には手書きも含む。
■公衆送信(放送、ネットへのアップロードなど)
■翻訳・翻案(編曲、歌詞の翻訳など)
■その他(頒布、譲渡、貸与など)
Q3 著作権の保護期間は?
日本の著作権法による権利の保護期間は、原則として著作者の死後50年。(映画の場合は公表後70年。)海外の作品の保護期間も同じです。この保護期間を過ぎて権利が消失した著作物は「パブリックドメイン(PD=公有)」とされ、私たちは自由に作品を利用することが可能です。一定期間著作者の権利を保護した後は、広く作品が社会に還元され、また、次の創作の源泉として活かされるべきである、という思想に基づいています。
なお、この保護期間は欧米では死後70年とされており、日本でも延長の動きがあるので、TPP(環太平洋経済協定)の交渉など、今後の動きには注意が必要です。また、「戦時加算」という規定が今も残っており、第2次世界大戦の交戦国の著作権に関しては、最大で10年ほど長い場合があります。これも注意が必要です。
Q4 「著作権」と「著作者人格権」ってどう違うのですか?
「私の作品を無断で利用しないで!」という権利は、裏返せば「利用する場合には代価を払ってください」ということで、基本的には「財産権」、つまり作品を生活の糧とする作曲家や詩人の経済的利益を保護するのが主な目的です。
しかし「無断で利用しないで!」という言葉のなかには、「されたら傷つく」という意味ももちろん含んでいます。この、「されたら嫌だ!」ということをされない権利をはっきり示したのが「著作者人格権」です。このことも、私たちが合唱を楽しむうえで大切なエチケットに関することなので、以下に挙げます。
【著作者人格権とは?】
■公表権
自分の作分を勝手に公表されない権利。
■氏名表示権
著作者名を表示するかしないかを決定する権利。
■同一性保持権
著作物を無断で改変、カットなどされない権利。
■その他、著作者の名誉を傷つけるような作品の利用は、やはり著作権法上、人格権を侵害する行為とみなされています。
「著作権」は財産権の一種であって、他人や企業への譲渡や相続が可能なのに対し、「著作者人格権」は、その人が持つ固有の権利であり、著作者が亡くなった時点で権利は消滅します。ただし、著作者の死後も「もしも生きていたら人格権の侵害となるような行為」は著作権法で禁じています。
この問題で私たちが身近に考える機会となるのは、「同一性保持権」に関して、特に古典作品の編曲であろうと思います。ヴィヴァルディやベートーヴェンの作品、それに文部省唱歌のさまざまな編曲を私たちは歌い、聴き、楽しんでいます。これらの作品は、もしも作者が生きていたら「私の作品がこんな素敵なアイデアで活かされるとは!」ときっと喜んでくれるだろう、という発想に依って立っています。
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さて、恐らく読者のみなさんは実際に合唱活動をし、演奏会を開いたりするうえでの、いろいろなルールを具体的にお知りになりたいと思います。それらはすべて以上に挙げた「著作権のあらまし」の応用問題なので、次号以降では、こんなことを整理したいと思います。
■「演奏する」というのはどういうこと?
■著作権法上の許諾や使用料支払いが不要なケースは?
■楽譜のコピーについて
■学校での著作権
■演奏会を開くときに必要なこと(録音・録画も含む)
■作曲・編曲を委嘱したいときは?