著作権便利帖vol.6
テーマ:実践編:楽譜コピーについて
前号までのテーマは「演奏会を開こう!」でした。演奏会を開く上で必要となる著作権法上の手続きについていろいろなケースについて考えているうちに、事務局長のMさんから、「ちょっとしたことなんだけど、気になりませんかね?」といった、素朴な、小ネタ的な疑問が呈されました。M氏はざっとこんなケースを挙げてくれました。
ちゃんと楽譜は買ってます!でもコピーしたい。その事情とは?
1.使い勝手の都合でコピーしたい
a.分厚くて重い楽譜の一部だけ抜粋して歌うので、歌う部分だけコピーして使いたい。
b.書き込みをして汚すともったいないので、コピーして使いたい。
c.ピアニストはいるけど譜メクリがいない。ピアニストが譜メクリしないで済むように、自分でコピーを横長に貼り合わせて譜面台に置いてます。
2.正規購入前のコピー
d.輸入楽譜を注文したけどなかなか届かない。また版元在庫切れなどで、購入可能になるまで日数がかかるけれど、合唱団としてそれまで待てないので、とりあえずコピーして練習を始める。
3.貸し出し、提出用
e.練習を見学に来た入団希望者に「こんな曲をやってるんだよ。」と、コピー譜を見せてあげる。
f.連盟のコンクールなどで、楽譜を審査員の数だけ提出しなければならない。みんな暗譜していないので、さあ困った!団員の楽譜を審査用に提出し、自分はコピー譜で歌うことは可能?。
4.少人数でのコピー(注1)
- 夫婦で同じ合唱団に所属しているのだけれど、「家庭内での私的複製」ということで2人で1冊買えばいい?
h.演奏会の曲を決めるのに、指揮者とパートリーダーだけ集まってとりあえず歌ってみたい。試しに1冊買っただけなのでコピーして歌いたい。
(注1)著作権法第30条(私的使用のための複製) が許されるケースとして「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」という規定がある。「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」というのはどんなケースなのでしょう?
さすがにMさん。自分で合唱団の指揮をたくさんしている経験から、「これでもか」というぐらいの悩ましいケースを列挙したうえ、この疑問を「楽譜コピー問題協議会」(注2)に投げかけて下さいました。その結果と、そこから私たちが考えるべきことについてはまた次号で。
(注2)「楽譜コピー問題協議会」は、楽譜の無断コピー防止のための啓発団体。作曲家や著作権管理、楽譜出版に係る業界から構成されています。