合唱団は子ども達の音楽の原点

合唱指揮者 掛江みどり

子どもと大人の合唱指導って、どこが違うの?大人は「つまんないレッスンだな~」「先生の言うこと、ちょっと違うんじゃない?」と思っても一応、我慢し聞くふりをしてくれます。ところが、子どもは飽きてきたり気分が乗らないと、途端にあくびをしたり、時計を気にし始めます。そこで工夫をこらしたテンポ感の良い具体的な指導法が必要になってきます。

 

現在、私は都内の私立と区立の少年少女合唱団に加え、母校音大附属音楽教室にて3歳~高校生までの合唱指導に従事しています。

思い起こせば30数年前、初めて子ども達の前に立った時、発声や選曲、カリキュラムや組織運営等々、分からない事だらけで途方にくれ、指揮法の指導を受け合唱講座を受講しつつ、可能な限り少年少女合唱団、学校、幼稚園を訪ねて見学させていただきました。試行錯誤を重ね、楽しみながら基礎力、表現力を身に付けることを目標として、リトミックや国内外の遊び歌・わらべ歌を取り入れた現在の独自の指導法に至りました。

 

今までに、カルミナブラーナ、マーラー他、国内外のオーケストラとの共演や、新国立劇場、日生劇場、二期会はじめ国内外のオペラやバレエにおいて数多くの児童合唱指揮を務めてきましたが、とりわけ團伊玖磨先生自ら指揮されたオペラ「夕鶴」稽古中に、棒を振りながら大きな声で言われた『子どもイイッ~!!』という言葉は今でも鮮烈に耳に残っています。

子ども達はプロフェッショナルな方々と共演する事で、音楽面は勿論、意識や行動面でも飛躍的に成長します。音楽家、教師、研究者、企業人等々様々な道に進んだ卒団生の多くは「合唱団は私の音楽、人生の原点」と心から言ってくれます。児童合唱を通した人間性、社会性の涵養の力を実感しています。

 

全日本合唱連盟が2019年に《小学生の為のコンクール》創設を計画していること、日本合唱指揮者協会も「こどものうたの行方」と称して《こどもの歌声指導Q&A》レクチャーや座談会実施など、児童合唱に焦点をあてた取り組みを大変心強く思っています。

 

若手の指導者は選曲や発声指導等に、ベテランの指導者も加速する少子化や受験によるメンバーの減少等に日々ご苦労されていることと思います。

児童合唱のオーソリティである先生方には是非、児童合唱指導者の会を組織化いただき、ノウハウを伝授くださる事を願ってやみません。