「オランダの昔と今を見て」

 

合唱指揮者:安達陽一

 

みなさま、こんにちは。合唱指揮者の安達です。

25年ほど昔、私はオランダ・アムステルダムに留学をしていました。当時、私が住んでいた場所はミュージアム広場から10分もかからない場所でした。このミュージアム広場はオランダ文化の中心地で、レンブラントの「夜警」が展示されていることで有名なアムステルダム国立美術館、ゴッホ美術館、コンセルトヘボウ、通っていた音楽院と全てこのミュージアム広場に面していました。当時は物凄い円高とヨーロッパ各国の通貨がユーロに統一される前でしたので、本当に物価が安く、オランダの全国共通美術館年間パスポートが約2万円、コンセルトヘボウオーケストラの演奏会が約6千円、オランダ室内合唱団の演奏会が約2千円という時代で、毎日が楽しく、音楽や絵画などを見たり聞いたりして大変多くのことを学ばせていただきました。

その後、留学から帰ってきてヨーロッパに行く機会がそれなりにあったのですが、1999年ロッテルダムにて行われた世界合唱シンポジウムに参加して以来、オランダの街中を歩く機会は残念ながらありませんでした。ところが有難いことにコロナ前の2019年、オランダに近いドイツのケルンで合唱交流をする機会をいただきましたので、それならば帰りに合唱団でオランダに行ってみよう!ということになりました。オランダではコンセルトヘボウで音楽を聴いたり、ユトレヒトで行われた私の先生の演奏会を聴いたりすることができ、自分の合唱音楽を見直すきっかけにもなり多くの刺激を受けました。

そして、実はオランダに行ってみて一番驚いたことは生活のデジタル化だったのです。電車に乗る時はスマホにアプリを入れてクレジット決済、QRコードをかざして自動改札を通り抜ける。コンサートや美術館のチケットは電子チケット。一部のプログラムはPDFでダウンロード。スーパーマーケットの電子決済などなど、オランダではすでに多くのことがデジタル化されており、いわゆるコロナ後の新しい生活がすでにそこにあったような気がいたしました。

今後、コロナ禍の影響もあり、私たちはこのようなデジタル化した新しい生活に対応していかなくてはならないのかもしれません。しかし、人間の声によって奏でられる心暖かい合唱文化はデジタル化されることなく永遠に受け継がれるといいな、といま思っているところなのです。