著作権便利帖vol.2

 

さて。みなさんはいま、「合唱ニュース」をお読みになっているぐらいですから、まず合唱がご趣味、という方が半分以上はいらっしゃる。それを前提にしましょう。歌を歌う、合唱をする、というのは、要するに「演奏する」ということですよね。ここで前回のQ2を思い出してみましょう。

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「歌をうたう」というのは、立派な「演奏」の訳ですから、音楽という著作物の利用、ということになる。つまり、著作権が消滅していない作品であれば、著作権者の許諾が必要、ということになります。でも、ちょっと待てよ。。。お風呂のなかでテノールのパートを歌ってみる。お母さんが覚えたての歌を赤ちゃんに歌ってみたら笑ってくれた。紅白をみながらつい口ずさんでしまった。楽譜売場で楽譜を手に取って、つい歌ってしまった。。。これって届け出が必要でしょうか?そんなことはないはずですよね。

著作権法では、著作物について「ある条件を満たすような利用(演奏)のしかた」をするときに限って権利の制約を受ける、ということになっています。

Q5 どんなふうに歌うとき、著作権法の制約を受けるのでしょうか?

☞こたえ:「公衆の前で・有償で歌う」とき

ええと、ここで若干小学生時代に戻って頂く必要があります。音楽の話なのに、なぜか算数の問題です。制約を受ける条件は以下の「A」かつ「B」の場合、つまり「A」の条件と「B」の条件の両方にあてはまる場合、ということになるのであります。まず「A」からいきましょう。

「公(おおやけ)」の前での演奏である。

Q6 ずいぶん抽象的ですよね。「公(おおやけ)」って?

☞こたえ:「不特定」または「多数」の人

「公(おおやけ)」。「公衆」ともいいますが、それは何か?というと、すなわち、「不特定」または「多数」、いずれかの条件に当てはまる人の前で、ということ。ひとりで口ずさむ。家族の前。友人と。これは「不特定」ではないので、セーフです。しかし、たとえば友だち100人の前だとアウト。「多数」だからです。恐ろしく人気のない、気の毒なストリートミュージシャンはどうでしょうか?残念ながらたとえ聴いてくれるお客さんが3人でも、「不特定」ですよね。

ところで、この「多数」というのは、ちゃんと「何人以上」と法律で決まっている訳ではありません。あくまで社会通念上の問題ですが、一説によれば、50人というあたりが分かれ目のよう。クラス会ならだいじょうぶだけれど、同窓会だとちょっと「多数」でしょうか。

「満員のビヤホールでビールを飲んでいるうちに、何故か歌いたくなってきたぞ。」

もう冬になってしまいましたが、こんな経験をお持ちの方もいらっしゃったのではないかと思います。居酒屋さんで歌うのに、申請が必要でしょうか?そこで、もうひとつの条件があります。

「有償」の演奏である。

再び小学校の算数の問題です。著作権法上、著作権者の許しを得たり、使用料を払う必要があるのは、こういう場合です。

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Q7 入場無料のコンサートなら「無償」ですよね?

☞こたえ:ちょっと注意が必要かも。

入場料を戴く演奏会はもちろん「有償」ですが、たとえ入場無料でも、いわゆる「ギャラが発生する」(演奏者に謝礼が支払われる)演奏会であれば「無償」とはいえないそうです。例えば演奏会で、指揮者やピアニストの先生に謝礼を払う。そんな場合はやはり「有償」です。ちなみに、「チケットは売っていますが、合唱団が赤字です!」というのも、残念ながら理由にはならないそうです。う〜ん。ちょっと厳し過ぎるような気がしますが、ある人に言わせると、こういうことだそうです。

「出演者にお礼を払う余裕があるのなら、その一部は音楽を創ってくれた人へもお礼をまわしてあげてください。」

なんとなくわかる気もしますが、納得がいかない気もしますね。「だって楽譜を買うとき、すでにお金を払っているじゃないか」という疑問が湧いてきました。私たち合唱団員は、「演奏会を開く」こと、そして「楽譜を買うこと」、2つの問題に突き当たります。そのことは次回また。