茶室のピアニスト⁇

              ピアニスト 織田祥代

たった四畳半の静寂な空間ですが、季節毎に違う鳥や木々の音、湯が沸く音、茶碗に注がれるふくよかでまろやかな音、涼しげで軽やかなお水の音が流れます。それらが見事なアンサンブルとなって私の五感を刺激するのです。そしてそこは陰と陽の世界。お茶を点てるだけではなく、狭い空間に見事なコントラストを創り出し、季節を愛で、凝縮した世界を創り出す研ぎ澄まされた感覚と教養を必要とする場所です。そこが私のとっておきの場所、茶室です。

 

譜読み、練習に追われて頭が疲労し気持ちに余裕がなくなると無性に行きたくなります。かれこれ通って十数年になるのですが、美味しいお茶菓子も頂けるし 初めはリセット、リフレッシュ出来ればいいかなと始めた茶道。そこはとんでもなく奥が深い世界だったのです。稽古を終えて茶室を出ると緊張から解放された清々しい気持ちと新たな創作へのエネルギーが湧いてくるのを感じます。まるで学生時代の上手くいったレッスンの後のような感覚。

 

ピアノと茶道の世界には様々な共通点があるなと感じています。これからはピアノもピアノ道と呼ぼうかなと・・・

ピアノは弾く人によって全く別の楽器のように響きます。茶道も同じお点前をしても一人一人違う個性が出るものです。黙っていてもその人の性格が演奏にもお点前にも表れます。間、呼吸、そして全ての間合いが絶妙にかかわりあって出来上がる世界なのです。人生経験を重ね、何度も体に入り込むまで稽古を積まなくては出来ない境地というのも共通しています。お点前の順序を覚え込むのに必死な私はまだまだ精進が足りません。自然に暗譜するまで弾き込むのと同じように、頭で考えなくても体が自然に反応するようなお点前が出来るようになるのはいつになるのやら・・・そしてピアノ道にも通ずる研ぎ澄まされた感覚と教養を身につけたいと思います。

茶道もピアノ道も奥が深く先の長い道、その魅力に取り憑かれながら、今日も明日も日々精進在るのみ。