産み、育てるひとたち

桜楓合唱団(指揮:松下耕/森田悠介)

 『花』と『朧月夜』。そして三曲目には『Tota Pulcla Es(栄光に満てる聖母)』(松下耕作曲)。我が国の近代における合唱音楽の夜明けから、現代を生きる作曲家の作品へ。今日の練習場のなかで、時空を超える音楽の旅を楽しみました。

1964年、日本女子大学合唱団の卒業生団体として誕生。創立時のメンバー(ということは、三善晃さんの名作『三つの抒情』の委嘱・初演者の訳でしょうか!?)も数人、元気に歌い続けているそう。そして大学の入学式での演奏など、現役の学生との交流も。

初代指揮者・木下保さんの後継者として、田中信昭、松原千振、藤井宏樹各氏、そして現在は松下耕さん。これまでに産み出した委嘱・初演作品リストを見渡すと、山田耕筰、信時潔をルーツとする木下さんの歩んだ道を、バトンタッチしながら常に前へと進む群像が見えるかのよう。

今日の練習の指揮は森田悠介さん。母あるいは祖母にあたる世代とともに、悠然と、そして生き生きとした音楽をつくっていく森田さんの表情が印象に残ります。その森田さんら若手指導者の熱心な勧めもあって、今年は、ラトヴィアから来日する合唱団との共演や国際合唱コンクールへの出演など、新たな活動も。彼女たちが育てた新しい世代の音楽家に、彼女たち自身もまた背中を押され、さらに先へと歩みを進めています。