打楽器と宇宙船

 

打楽器奏者 篠崎 智

小学生の頃から映画スターウォーズが好きだった。わくわくしながら夢中で観たあの映画の魅力は様々あるが、その中の一つは宇宙船などの乗り物がいい感じに汚れている、ということだろう。当時SFといえば流行りのシンセサイザーのサウンドに乗ってツルツルピカピカのかっこいい宇宙船が登場するイメージが強かったから、ボロい船が宇宙を飛び回る設定はある種のリアリティと親近感が感じられ、他とは違う独特の魅力があった。

中学に入り吹奏楽部で打楽器と出会う。実は最初いくつかの管楽器を試したのだが何故か全く音が出ず、ピアノを習ってたなら音符は読めるだろう、ということである日の合奏で突然小太鼓を叩くことになった。

バチの持ち方もよく分からぬまま何とか合奏についていったのだが、四分音符が続く箇所で不思議な感覚に襲われる。曲は2拍ごとに和音が変化していくのだが、小太鼓はただ同じ音で刻み続けるだけだった。あれ、和音が変わるのに音を変えなくていいんだ⁉はっきりした音高を持たない打楽器の音の特徴を肌で感じた初めての瞬間だった。

打楽器の多くはノイズに近い音であるため、和音やメロディを奏でることはできないが、その代わり和音や調性を選ぶことなく自由に音を加えられる。そしてそれら音はスパイスの様に音楽に作用し、時に抜群の演奏効果をあげることを演奏を通して学ぶことができた。

合唱団と打楽器で共演するとき、私は作り上げられたハーモニーやメロディーにノイズを加え音を汚す。ひとつ間違えば音楽を台無しにするリスクを負いながら、ビートだったり、音色だったり、音楽を感じながらより豊かな演奏効果を目指してノイズを音楽に練り込んでいく。それは難しくも楽しい作業であり、スリルと興奮を伴う冒険のようでもある。

私の小太鼓の枠は真鍮製で使い勝手が良く、もう30年以上使い続けている。最近いよいよ年季が入ってきて、見た目がスターウォーズに登場するボロい宇宙船のようになってきた。そうか、私が打楽器の魅力に気付くことができたのは映画に登場したあの宇宙船のお陰なのかもしれない。ふとそんなことを思いながら今日もまた楽器に向かう。誰かの音をもっと素敵に汚せるようになるために。