■コール・ブレヴィス (指揮:中谷美恵子さん)
家族以上に濃い時間を過ごす仲間たち
大きなガラス窓から日差しも差し込み、外には緑、という明るい練習場で、休日の練習が始まりました。息という「音にならないもの」をお互いに聴き合い、合わせることに多くの時間を費やしています。キリストが飼い葉桶で生まれたのを見た、という大きな驚きをどう生き生きと表現するか。指導する中谷美恵子先生は、「息」が音と言葉をつくり物語を紡いでいく、そのテクニックを伝授していきました。
1983年、小学校のPTAコーラスとして誕生。多忙な学校の先生を助ける形で中谷さんが指導を引き受ける。そして混声合唱団へと形が変わって今に至っています。パレストリーナの「ミサ・ブレヴィス」から受けた音楽的ひらめきから合唱団の名を決めたそう。ルネサンス時代の作品のほか、プーランク、デュリュフレ、そして北欧の作曲家など近現代の宗教音楽もレパートリーに。「ブレヴィス」すなわち「小さい」という意味のラテン語のとおり少人数で活動を続け、コロナの影響もあって今では4人という最小規模の合唱団ですが、大編成の合唱にはない醍醐味があるといいます。視線を交わしながら息を合わせる。一人一人の声とじっくり向き合う。休日の練習では、そんな密度の濃いアンサンブル練習をしながら、息抜きにご飯やお茶、そしておしゃべりもたっぷり。厳しい練習とゆったりとした時間、急緩が自在に交錯する1日です。
都連の合唱祭や春こん。そして地域の音楽祭や合唱祭、公民館イベント、さらに高齢者施設でのボランティア演奏もたくさん。やっとそうした忙しい日々が戻りつつあります。昭和から平成、そして令和。みなさん長い長いお付き合いだそうです。
大町陽一郎、田中信昭、ポール・ヒリアー、ピーター・フィリップ。中谷先生はさまざまな音楽家から指導や助言を受け、声楽家としての視点、指揮者としての視点、両方のバランスをとりながらの指導を心がけるそう。そして歌い手も「客観的な指導を受けること」と、「自分で発見し、自ら殻を破ること」、そのバランスが必要、と。